朝日仁美さんが選ぶおすすめの絵本

◎健康の大切さを伝える絵本

『むしばあちゃん』(苅田澄子・作 おかべりか・絵)

ご飯をたくさん食べる、お菓子も大好きな女の子が主人公です。歯みがきをしないまま寝てしまうのですが、夜のうちに「むしばあちゃん」が歯をきれいに掃除してくれていました。あるとき「むしばあちゃん」はあまりに歯が汚れているのを見て、掃除をやめてしまいます。当然虫歯になり、歯医者さんへ。「むしばあちゃん」は虫歯の治療が終わった女の子に、もう一人のおばあちゃん「いればあちゃん」がいることを教えます。「いればあちゃん」は歯を抜くのが大好き。自分の歯がなくなって入れ歯になると困ること、つらいことが多いと伝えます。歯の大切さを楽しく学べる絵本です。

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◎食べることの大切さ・食品ロスを考える絵本

『かける』(はらぺこめがね・作)

 表紙はカレーライス。「かける」をテーマにした食べ物の絵本です。「ちゅるるるるー」とケチャップをかけるのは、オムライス。始めはそれを何にかけるのか分からないのですが、ページをめくると美味しそうな食べ物が出てきます。「ちょろちょろ ぴゃっぴゃっ」とお醤油を、「しゃららんら~ん」とシロップをかける食べ物は? ページをめくるのがとても楽しい一冊です。

 ひと手間かけて、絵本に紹介されているものを作ってみてください。絵本と日常がつながります。食品ロスの問題や食べることの大切さを考えるきっかけになると思います。

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◎自分の住む町、国の良いところを見つける絵本

『大阪うまいもんのうた』(長谷川義史・作/絵)

 大阪在住の絵本作家が、大阪弁で大阪のおいしい食べ物を紹介する一冊です。タコ焼きやお好み焼きなど、大阪の名物が愛情を持って描かれています。大阪を知らない子どもにとっては知識になりますし、行く予定があるなら事前に読んでいくのもいいですね。帰ってきてから「これ、食べたね」と読むのも楽しいでしょう。

作品の舞台は大阪ですが、自分の住んでいる地域のおいしいものや有名なものを知ったり、地図で街の形を見てみたりしてほしいと思います。

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◎働く楽しさ、仕事への興味を育てる絵本

『おとうさんはパンやさん』(平田昌弘・作 鈴木まもる・絵)

 主人公は小学生の女の子。「わたしのうちはパンやさんです」と家族を紹介しています。パン屋さんですから朝早くからお父さんが働いていて、妊娠中のお母さんもお店に立っていることを「わたし」が語っています。「わたし」はお父さんのパン作りをよく見ているし、話もたくさんしているようで、仕事や働きがいを考えるキャリア教育につながっています。「わたし」のお母さんを気遣う様子やお姉ちゃんになる決意のようなものから、家業であるパン屋さんが家族にとって大切であることが伝わってきます。

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◎気候変動、環境について考える絵本

『まなつのみみず』(すとうあさえ・作 かつらこ・絵)

 夏野菜を作っているおじいさんの畑が、暑さで干からびてしまいます。ミミズたちは仲間と一緒に体を並べてつくる「ミミズもじ」で、他の仲間に「たすけて」と伝えます。ピンチを知ったたくさんの仲間がおじいさんの畑に集まって、良い土を作るために一生懸命仕事をし、最後には天に向かって「ミミズもじ」で雨乞いをするというお話です。

 雨が降り、畑は元気を取り戻します。ミミズたちの帰り道、モグラのじいさまがご褒美として蛍の生息地に案内してくれます。ミミズが愛おしく思える絵本ですが、同時に気候変動や仲間の大切さを考えさせてくれる内容になっています。

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◎世界の国々への理解を深める絵本

『おちゃのじかん』(土橋とし子・作/絵)

 「ぼく」の家に、親戚のおばさんがアルゼンチンのお土産・マテ茶を持ってくることからお話が始まります。おばさんに続き、おじいちゃんやおばあちゃん、おとうさん、おかあさんが世界の各地で飲んだお茶やそのときの思い出を話してくれます。茶器や作法、一緒に食べたお菓子のこと。絵をよく見ると部屋の様子や飾られている玩具、家具などからも世界の文化を知ることができます。最後に紹介されているのは日本茶。みんなでお茶を飲むという家族団らんが描かれ、平和な日常を感じることができます。

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◎個性を大切にし、自分を好きになる絵本

『ゆうきをだして!』(くすのきしげのり・原作 いもとようこ・文/絵)

 主人公はチューリップの球根です。春になって他の球根たちは芽を出して育っていくのに、一つだけ土の外に出ようとしない球根がいます。モグラたちがそんな球根を励まします。おひさまに暖められているうちにうっかり芽を出してしまい不安になっている球根に、今度は新しい友だちや降り注ぐ雨が「ゆうきをだして!」と優しく声をかけ、外の世界が楽しいことを伝えます。

 助けてくれる仲間がいることや勇気を出して行動する大切さを伝えながら、自然界や四季の素晴らしさも知ることができる一冊です。その子らしさを尊重して見守るモグラたちの様子は子育てのヒントにもなると思います。

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あさひ・ひとみ

「絵本でSDGs推進協会」代表理事。 学校図書館司書。JIPC読書アドバイザー。絵本専門士。 20年以上絵本の読み聞かせや紹介を続け、現在は学校司書として新潟県糸魚川の小・中学校の図書館に勤務。絵本専門士の資格を活かし、2018年より「絵本でSDGs推進協会」を立ち上げる。全国各地で絵本とSDGsをつなぎ、「自分ごと」として考えるきっかけづくりを提案している。「絵本のある場所がSDGsの入口になりますように」とHP等で発信中。2021年、日経ウーマンエンパワーメント賞を受賞。 https://ehonsdgs.amebaownd.com/

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